006 すみれ

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名 称
スミレ
学 名
Viola mandshurica
科・属
スミレ科
スミレ属
特 徴
多年草
原 産
世界各地の温帯
花時期
4〜5月頃

2009年03月24日

「野蛮人の思考(La Pensée Sauvage)」と書かれた題字の下に、
「野生のパンジー(La Pensée Sauvage)」の絵が描かれた表紙を持つ、
とても美しい書物がある。

これは、フランス語の「Sauvage(ソバージュ)」という単語が、
「野蛮人の」と「野生の」という2つの意味を併せ持ち、
さらには、「Pensée(パンセ)」という単語が、
「思考」と「パンジー」 という2つの意味を併せ持つことから想を得た、
シャレた書物である。

「野生のパンジー(La Pensée Sauvage)」というと、
悪条件にも屈しない、逞しく、しかも美しいイメージを思い浮かべるのに、
「野蛮人の思考(La Pensée Sauvage)」というと、
なぜ、非合理的で遅れた考え方だ、というイメージを思い浮かべてしまうのか、
どちらも同じ言葉(La Pensée Sauvage)だと言うのに・・・
そうした異議申し立てが、そもそもの表紙から語られている。

日本語で「野生の思考」と訳されることが一般的なこの書物において、
我々が最も進んでいると思っている現代社会の考え方が、
ただ単に「栽培」されているがために合理的に見えるだけであることを、
レヴィ=ストロースは、未開人の神話や習俗の分析を通じて、
明らかにしようとした。

しかし、厳密に言うと、「野生のパンジー」なるものは存在しない。
パンジーとは、いろいろなスミレを交配して、
人為的に作り出されたものだからである。
つまり、パンジーそのものが「栽培」品種なのである。
だから、「野生のパンジー」とはパンジーではない何か別の物のことである。
私たちにできることは、ただ、その起源に思いを馳せることだけである。
同じように、「野生の思考」も、現代人にとっては、
その存在さえ確認しがたいファンタジーなのかもしれない。
ここに、「野生の思考」という書物の本当の難しさ、面白さ、凄さがある。

しかし、パンジーの元となった「野生のスミレ」は、
今もしぶとく生き残っている。
文明化された東京のコンクリートの割れ目からでも、
ニュキっと芽を出す逞しさを持ちながら、
うつむくように清楚で物憂げな花をつける。

ちょっと注意すれば、意外なほどに身近なところで発見できるほど、
日本は、種類も数も、世界に名だたる「スミレ王国」である。
芭蕉が、「山路来て 何やらゆかし すみれ草」とうたった「ゆかしさ」は、
今もその気になりさえすれば、そこかしこに、感じられるのである。

野生の思考
野生の思考

クロード・レヴィ・ストロース (著) 大橋 保夫 (翻訳)
みすず書房
ISBN-10: 4622019728 / ISBN-13: 978-4622019725


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