015 イヴ・ピアジェ

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名 称
バラ(イヴ・ピアジェ)
学 名
Rosa cvs.
科・属
バラ科
バラ属
特 徴
木本性蔓植物
原 産
フランス原産園芸品種
花時期
通年

2009年11月11日

高山宏の「表象の芸術工学」という本を貪るように読んでいたら、
俳句を研究していて、実は漢字も書けたというドイツの詩人・リルケが、
周りにいるドイツ人に「薔薇」という字を書いて見せて、
「これはある花の名前をあらわす日本文字だが、何を指しているのか」と聞くと、
十中八九“Rosen(薔薇)”という答えが返ってきた…
というようなことが書いてあった。

つまり、漢字を知らない人に見せても、「薔薇」は「バラ」に似ているらしい。

確かに、「薔薇」は「バラ」の花に良く似ている。
幾重にも重なる「バラ」の花びらの、その複雑なカタチが「見えて」くるようであるから、
「薔薇」は、漢字の持つ表象性を示す好例なのかもしれない。

ところが、ここでちょっとしたギモンが浮かんでしまう。

いうまでもなく、「薔薇」はもともと、中国の漢字である。
そして、中国はモダンローズの原種となったコウシンバラの原産地だから、
「薔薇」という漢字が誕生した頃、その文字が指し示していた「バラ」とは
コウシンバラなどの野生種のはずである。
しかし、その頃の野生の「バラ」には、わずかに5枚ほどしか花びらがなかったのである。
それは、一重咲きの、とても清楚な感じのする、シンプルな花だ。
どちらかというと、同じバラ科に属する「梅」や「桜」に近いイメージである。

だとするなら、「薔薇」という漢字は、もともとは「バラ」にちっとも似ていなかったんじゃないだろうか。
少なくとも、現代の「バラ」ほどには「薔薇」という漢字に似ていなかったはずである。

幾重にも重なる、複雑で精緻な「バラ」の花姿は、
幾万回と繰り返された品種改良によるタマモノだ。
だから、まず、「薔薇」という漢字の方が先にあり、
その漢字を真似るようにして、複雑な花びらを持つ「バラ」が開発されていった、
と見る方が自然な気がしてくるのである。

「薔薇」が「バラ」に似ているのではなく、「バラ」が「薔薇」に似たのだ…
そう考えると、漢字の持つ力に、あらためて驚かされてしまう。

ところで、最も「薔薇」という漢字に似ている「バラ」の品種は何だろう、
そういう観点から「バラ」を見ていた時期があった。
あまりにいろいろ候補があって1つを選び出すのは難しいのだけれど、
個人的な、とりあえずの結論は、「イヴ・ピアジェ」である。


表象の芸術工学
表象の芸術工学
(神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ)

高山 宏 (著)
工作舎
ISBN-10: 4875023642 / ISBN-13: 978-4875023647


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