- 名 称
- 吉野桜
- 学 名
- Prunus yedoensis
- 科・属
- バラ科
- サクラ属
- 特 徴
- 木本性蔓植物
- 原 産
- 日本産園芸品種
- 花時期
- 3月〜4月
2mを超す桜の枝を、毎週100本ずつ仕入れて装花する、
というイベントの仕事に奔走していた矢先、
あの大地震が東北地方を襲った。
福島県や宮城県からの荷がすべてストップして、
改めて、東北が桜の一大生産地であったことが痛感された。
東北の生産者さんたちの無事を案じながら、
何度も早朝の市場に通い詰め、何とか必要な本数の桜を確保したが、
毎週活け代えて1ヶ月間続くはずだったそのイベントは、
結局、1週活けただけで中止となってしまった。
そうこうしているうちに、福島原発の放射能漏れが、
実は、相当深刻な事態だということになり、
早く東京を脱出した方が良い、という声も聞かれるようになって、
あちらこちらのWebサイトやら、海外とのメールのやり取りやらで、
情報収集ばかりに奔走するようになってしまった。
何が本当で、誰が信用できるのかがわからない不安。
そんな時、「この大地震はユダヤ資本が故意に引き起こした人工地震である」
という荒唐無稽なTwitterが、繰り返し、繰り返し、つぶやき続けられたのである。
いつもなら一笑に付すはずのトンデモ説であるにも関わらず、
「その証拠に、日本在住のユダヤ人は、ほとんど3.11の前に日本を脱出している」
というつぶやきを目にして、思わず、ハっと息を呑む。
15年も日本に住み続け、お店の良き理解者であり、
英会話の先生でもあったイスラエル人の友人が、
2月初旬に、唐突に、日本から去ってしまっていたのである。
彼女の離日は、本当に突然すぎて不自然な感じさえあったのだから、
「もしかして、彼女はこの大地震を前もって知らされていたのではないか。
そして、もしそうなら、この大地震は、本当に
ユダヤ資本による人工地震なのではないだろうか」
という思いに、思わず心を占められそうになったのである。
しかし、しかし、と、そこでようやく冷静になって、
普通に考えれば、そんなことが絶対にあり得るハズがない、
と、やっとのことで思い至る。
たまたま、地震の前に日本を去ったユダヤ人を、たった一人知っているだけで、
他のユダヤ人も全て事前に日本脱出したと思い込んでしまう根拠は、
全くゼロに等しいではないか!
関東大震災の時は、頻発した火災を朝鮮人のせいにする風評被害があったという。
第二次大戦のドイツは、全くの思い込みだけでユダヤ人を大量虐殺した。
そうした事実は、現在の自分とは違う遠い過去の、
まだ生活水準も低く、歴史的理解も足りない時代の、
「無知蒙昧」がなせる技だと
普段はなんとなく思ってしまっているのだけれど、
なんのことはない、自分の心の中にも、
そうした「無知蒙昧」が巣喰っていたのである。
「無知蒙昧」、それは、多分、ひとの心の「弱さ」のことだ。
理解したくないことが起こったとき、ひとはその「弱さ」ゆえに
とんでもないことまでも、カンタンに信じてしまうものなのだ。
そう思うと、地震で死ぬことよりも、
放射能の恐怖に身をさらされることよりも、
自分の心の「弱さ」こそが、本当に恐ろしいことのように思われた。
もうすぐ桜の季節がやってくる。
桜は、日本人が、その心の「弱さ」を補うようにして愛してきた花である。
死の恐怖も、自己のアイデンティティの不安も、
すべて桜が担ってくれていた時代があったのである。
桜前線が、今年も美しく日本を北上して、東北を包んでくれますように。
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